大判例

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東京高等裁判所 昭和48年(行ケ)49号 判決

一 本願発明につき、出願から原告主張の審決が成立し、その謄本が送達されるにいたるまでの特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨及び右審決の理由に関する原告主張の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、右審決に原告主張のような取消事由があるか否かについて考える。

(一)成立に争いのない甲第三号証によると、本願発明の出願に先立つて刊行された引用例には、次のような構成を具えたパチンコ球の自動循環装置が記載されていることが認められる。

1 各パチンコ機から出るアウト球を、排出樋、還元パイプ等を経て一個所に集め、これを計数箱に送り、そこからコンベアシステムの垂直搬送機構内のバケツトに入れ、右搬送機構の作動によつて順次高所に運び上げて補球タンクに集積し、そこから再び各パチンコ機に供給するシステムにする。

2 右経路中、還元パイプから計数箱に至る間に、搬送されるアウト球を自動的に研磨する玉磨機を組み入れる。

3 そのほか、各種ランプ、メーター等が配置されている配電盤のある司令室を設け、配電盤にパチンコ機の玉切れの表示が出ると、司令室から作動指令を発し、これによつて自動的に補球タンクからパチンコ機の補球口に一定量のパチンコ球が供給され、また、各パチンコ機から出るアウト球の数は、その排出口に附設された電子メーターによつて、司令室のメーターに表示される。以上

そして、原告は、司令室における人為操作を理由に、引用例の装置をもつて自動的な装置ではない旨を主張し、前出甲第三号証によると、右装置の司令室に二、三の操作員を要することが認められるが、しかし、成立に争いのない甲第二号証(本願発明の特許公報)によると、本願発明にいう自動循環とは、パチンコ球の循環経路における搬送及び研磨に関し、人力を用いないで、機械的に行うことを意味するものであることが認められるから、右以外の事項に関して人力を用いることは、本願発明の関知するところではないといわねばならない。したがつて、引用例の装置は、少なくとも、先に認定した1、2の限度において機械化されている以上、本願発明におけるのと同様の意味で、自動循環装置であると認定して妨げず、右認定を左右するに足りる証拠はないから、右審決は、引用例の装置の技術的内容を、この点において誤認したといわれる筋合いはない。

また、原告は、引用例が右装置につき具体的な説明、図示を欠いているため実施可能とはいえないと主張して、その先行技術としての適格を否定するもののようであるが、前出甲第三号証によると、引用例自体は、いわゆる業界紙に過ぎず、これに記載の図面もパチンコ球自動循環装置の厳密な設計図でなく、単なる説明図であることが明白であるから、その装置の具体的構造に不明な部分があつても、異とするに足りないが、引用例には、少なくとも、先に認定した限度では、一応自動循環装置の構成が示されていて、その具体的構造の不明な部分は、これをどのように補つても、引用例の実施が不可能であるというものとはいえないのみでなく、これを補うに要する技術は、むしろ本願発明の出願当時における関知の技術の及ぶ範囲内にあつたものと認められるから、当業者としては、適宜、周知の技術手段を藉りることによつて引用例を実施しうるものと解するのが相当である。したがつて、引用例は、本願発明にとつて先行技術としての適格を欠くものということはできない。

(二)次に、先に認定したところに基づき本願発明の要旨と引用例の装置の構成とを対比すると、両者は、各パチンコ機のアウト球を一個所に集め、これをコンベアシステムの垂直搬送機構のバケツトに搬入したうえ、右搬送機構の作動によつて順次高所に運び上げて一個所に集積し、そこから再び各パチンコ機に供給することとし、その循環搬送経路の途中に設けた研磨機によりパチンコ球を自動的に研磨するように構成されたパチンコ球の自動循環装置である点において共通するとともに、アウト球を垂直搬送機構によつて運び上げる場所については、本願発明においては、これを階上としているのに対し、引用例において特にこれを指定していない点(この点は当事者間に争いがない。)及び引用例には本願発明にない、先に認定の司令室の機構を設けている点において差異があることが認められる。

しかしながら、本願発明において、アウト球を階上に運び上げるように構成したことの目的は、その明細書(前出甲第二号証)中にも記載されていないので、引用例の場合と同様に結局、パチンコ球の有する重力をその循環搬送に利用するという程度を出ないものと認めるほかはなく、これに必要なだけの重力を得るため、パチンコ球をどのような高所まで運び上げるかは、パチンコ遊技場の建物構造等との関連において自ら決定されることがらであつて、本願発明のように、その高所を階上に限定することに、格別の技術思想があるものと認めることはできない。また、引用例に設けられた司令室の機構は、本願発明の要旨に、かかわりのない特有のものであるとともに、本願発明がこれを省いたことにより格別の効果があるものと認めることはできない。

なお、原告は、両者の間には、次の数点にも差異がある旨を主張するが、右主張については、次のように判断する。

1 自動循環か否かについて

本願発明、引用例の装置がともに自動循環装置であるということができ、この点に原告主張のような差異がないことは、先に説示したとおりである。

2 連続動作式か否かについて

先に示した本願発明の要旨に前出甲第二号証の明細書の記載を併せ考えると、本願発明においては、パチンコ球が、パチンコ機からアウト球として排出された後、再びパチンコ機に供給されるまで、パチンコ球の全循環経路を通じて、パチンコ球を「順次」処理するように構成されていること、そして、このことは本願発明の明細書に「順次」の用語によつて示されていることが認められるが、右にいう「順次」の語は、その字義どおり「次々に順を追つて」という意味に解しえないものではないと同時に、その順を追う動作が連続的であるか、間歇的であるかを、そのいずれかに限定した意味に用いられるものとは解し難いから、本願発明がパチンコ球を順次に処理することにしていることをもつて、連続動作式であることを構成要件としていることの根拠とすることはできない。そして,他に本願発明が右のように構成されているとみるべき技術上の理由を認めることもできないから、本願発明の右のような構成を前提として引用例の装置との間に差異があるとする原告の主張は失当である。

3 アウト球の集合場所及び垂直搬送機構の単複について

先に示した本願発明の要旨には、「アウト球を一個所に集めて、それをコンベアシステムの垂直搬送機構の作動によつて順次階上に上げ……」とあるが、この構成は、単に、アウト球を垂直搬送機構に搬入する一歩前の段階において一個所に集めることを要件としているに過ぎず、その集合場所さらには垂直搬送機構をそれぞれ唯一つに限定するものと解すべき理由はないから、さような限定があることを前提として、引用例との間に差異があるとする原告の主張は理由がない。

4 モーターの個数について

先に示した本願発明の要旨及び前出甲第二号証の明細書の記載によつても、本願発明において全装置の電動源として、モーターの個数が二個に限定されていると解すべき理由はないから、その限定があることを前提として、引用例の装置との間に差異があるとする原告の主張も理由がない。

そうだとすると、結局、本願発明の要旨とする技術思想のうち、パチンコ球を運び上げる高所の位置を指定した点は、いわゆる設計上の選択事項に属し、その他は、すべて引用例の技術思想中に開示されていることに帰するから、本願発明は、引用例から容易に推考しうるところであつて、特許を受けることができないものというべく、本件審決には原告主張のような違法がないといわざるをえない。

三 よつて、右審決の取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

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